部屋の隅っこに固まって、ごはんにも手をつけない姿を見ると、「この子はうちに来て幸せなのかな…」と不安になりますよね。

尻尾を振ってくれる日は来るのかな。
もし、ずっとこのままだったらどうしよう…。
そんなふうになる気持ち、よくわかります。
なぜなら、うちの子もお迎えした当初は、クレートの奥に丸まって、目が合うとガタガタ震えていたからです。
でも、1ヶ月、半年、1年と一緒に暮らすうちに、「この子に、仲間だって認めてもらえたかも」と感じられる変化があったんです。
「時間はかかるけど、ちゃんと心の距離は近づいていく」
そう思えるようになった私の経験を、今まさに悩んでいる里親さんに伝えたくて、この記事を書きました。
「この接し方で大丈夫かな…」
「この子をなでられる日は来るのかな…」
そんな思いが、少しでも軽くなるようなヒントをお届けできたらうれしいです。

名前:レイン
倉敷市保健所出身の元野犬
2023.4 推定4歳の時にお迎えしました。
元野犬の保護犬がなつかない理由とは?


なつくのにこんなに時間がかかるなんて…
もしかして私の接し方が間違ってる?
「なつかない」「慣れない」理由は、私たちのせいではなく、その子のこれまでの“環境”にあることがほとんどです。
人と触れ合う機会がないまま育った
→ 家の中で人と暮らす、名前を呼ばれる、なでられる…そんな経験がゼロ。
人への警戒心がとても強い
→ 捕獲された時の恐怖や、人から追われた記憶が残っていることも…。
とにかく臆病で、苦手なものが多い
→ 音、におい、手の動き、視線……何もかもが初めてで怖いのです。
元野犬の保護犬は、こうした背景から「人間って怖い」「近づきたくない」と思ってしまう…。
これは、ある意味仕方のないことなのかもしれません。
保護犬が慣れるまでの期間と接し方

いつか慣れるって聞くけど、それっていつ?
1週間? 1ヶ月? 半年…?
そんな気持ちが少しでも軽くなるように、うちの子たちが慣れてきた期間を、参考としてご紹介します。
コテツ(オス/推定10ヶ月)
・トライアル翌日には、慣れたと実感
・お尻をくっつけて甘えてくるように
・なでると尻尾をふって喜ぶ
レイン(メス/推定4〜5歳)
・お迎えして1ヶ月くらいで、慣れてきたかな…でもまだ自信はない
・ビクビクする回数が減ってきた
・机の下でくつろぐ様子が見られるように
・お座りを覚えた
体感としては、子犬か成犬か・性別・そしてその子の過去の経験によって、慣れ方に差があるように感じました。
そしてもうひとつ大切なことは、「慣れる」というのは、「べったり甘えてくれる」だけではないということ。
目が合うようになったり、名前を呼ぶと耳がピクッと動いたり…。
それだけでも、元野犬の子たちにとっては大きな一歩なんです。
まずは「ここは怖くないよ」と伝えよう

保護犬が「ここは怖くない場所だ」と思えるようになるには、私たちの何気ない日常が、いちばんの安心材料になります。
とくに最初のうちは、なでたり声をかけたりすると、逆に緊張させてしまうこともあります。
そういうときは、
・家族がリビングで楽しそうに話している姿
・おいしそうにご飯を食べる様子
・おだやかな声のトーンや、ゆったりした動き
このような人のぬくもりを感じられる日常を、見せてあげるといいかもしれません。
そうすることで、「ここは怖くない」と感じてもらえるきっかけになるのです。

犬も幸せそうな雰囲気や、やさしい声に安心するんだよ。
それに、みんな楽しそうだと仲間に入りたくなるの。
愛犬が慣れるまでに私が心がけたこと
うちの子が慣れてくれるまでに、私が心がけたのはたった2つのことでした。
・見たい、さわりたいをグッと我慢
・家族と同じように声をかけること
最初のころって、「大丈夫かな?」って心配するあまり、ついじーっと見てしまったり、何かしてあげようと近づいてしまうことってありますよね。
でも、警戒心が強い保護犬にとって“見られている”ことが、プレッシャーになることもあるんです。
だから私は、見たい、さわりたい気持ちをグッと我慢しました。
そのかわりに、「おはよう、ごはん食べる?」「おやすみ、また明日ね」と声をかけて、家族として自然にそこにいることを少しずつ伝えていきました。

見守りカメラで撮影して、別部屋で見るのも楽しいですよ。
「慣れた」と「なついた」は同じようで違う

「慣れた」と「なついた」。
どちらも同じように聞こえますが、保護犬の場合、この2つはちょっと違うものじゃないかと私は思っています。
実際、同じ元野犬だったうちの子にも、その違いがありました。
コテツ
ごはんを喜んで食べて、すぐに甘えてきて、なでるのも全然平気。
コテツは「慣れた」と同時に「なついた」と感じられる子でした。
レイン
一緒に暮らすことには慣れてきたけれど、さわられることがどうしても苦手。
名前を呼ぶとこちらを見てくれるけど、自分から甘えてくることはまだありません。
「なついた」とは、まだ言い切れないかな…というのが今の正直な気持ちです。
コテツが早かったぶん、1年以上たってもなつかないレインに、少し戸惑ってしまったのも本音です。
それでも今は、この子がそばにいてくれるだけで、十分だなと思えるようになりました。
犬がなついた時の仕草とは?

犬がなついたって、具体的にはどんな仕草のことを言うんだろう?
うちの子との距離が少しずつ縮まってきたころ、ふと気になって調べてみたことがあります。
一般的には、こんな仕草が「なついてきたサイン」と言われているようです。
①寝転んでお腹を見せる
②顔をペロペロ舐める
③しっぽを振る
④前足やあごを乗せてくる
⑤体を寄せてくる
⑥飼い主のあとをついて歩く など…
でも、うちの子を見ていて思うのは、保護犬はこうしたサインも控えめだということ。
鼻先でツンとふれてきたり、私の足元でお昼寝していたり。
その小さな仕草のひとつひとつが、この子なりの「大丈夫」「ここが安心」っていうメッセージなんじゃないかと、私は感じています。
元野犬が慣れたのはいつ?他の里親さんのリアルな声

「うちの子はトライアル翌日〜1ヶ月くらいで、少しずつ慣れてきたけれど、ほかの子はどうだったんだろう?」
ふと気になったので、元野犬の保護犬と暮らす里親さんたちに、慣れた期間を聞いてみました。
お話をうかがってわかったのは、子犬か成犬かによっても、慣れるまでのスピードがかなり違うということ。
目安としてはこんな感じでした↓

【3ヶ月くらい】
家の中だけだった散歩が好きになった
手からおやつを食べられた
(成犬譲渡:どんちゃん)

【初日】
床やソファで爆睡
初日からついてきて拍子抜けした
(子犬譲渡:わんごろう君)

【1ヶ月くらい】
行動範囲が広がった
自分から近寄ってきた
撫でるとお腹を見せるようになった
(成犬・ボランティア譲渡:シディちゃん)

【初日】
夜鳴きはあったけど、最初からベッタリ
(子犬・ボランティア譲渡:原田 礼君)
このように、「慣れるまでの期間」には大きな個体差があります。
とくに関係していそうなのは、次のような点です。
・子犬譲渡or成犬譲渡
・保健所からの譲渡か、ボランティアからか
・性格や性別
・新しいお家の飼育環境
SNSを見ると、「うちの子はまだ慣れない…」と不安になることもあるかもしれません。
でも、比べなくて大丈夫です。
だって、2代続けて元野犬と暮らした私も、ふと「なついたって言えるのかな」「もっと仲良くなれるんじゃないか」と、切なくなることがありますから。
なつかない?と心配ならボランティア譲渡という選択も
実際に保護犬を迎えたあと、「いつになったらなつくの…」と感じることは多いですが、そもそも、「迎える前から不安で迷っている」という方も少なくありません。
そんなときに考えてみてほしいのが、ボランティア団体からの譲渡という選択肢です。
私がボランティア譲渡をおすすめする理由は、大きく3つあります。
・困った時にすぐ相談できる
・人のやさしさを経験していて比較的慣れが早い
・好きなこと、嫌がることが事前にわかる

ひとつずつ、くわしくご紹介していきますね。
理由①困ったとき、一緒に見守ってくれる人がいる安心感
保護犬を迎えたあとの「困った…どうしよう」にも、すぐ相談できる。
それが、ボランティア譲渡の大きな安心ポイントです。
なぜなら、保護活動をしているボランティアさんたちは、譲渡してからもずっと、その子の幸せを願っているからです。
「ごはんを食べないんです…」
「こんな仕草をしたんですけど、大丈夫でしょうか?」
そんな小さな相談にも真剣に耳を傾け、寝顔の写真を送れば、「幸せそうで泣けました」と一緒に喜んでくれることも。
譲渡して終わりじゃなく、そのあともずっと見守ってくれる。
だから私は、ボランティアさんを“もうひとりの家族”だと感じています。
理由②やさしさにふれた経験が、信じる力になる

ボランティア譲渡の場合、その子はすでに人と暮らし、やさしさを経験しています。
誰かにやさしくしてもらった記憶が、ちゃんと残っているんです。
そして、おいしいものも、ふかふかのお布団も知っている。
だから、「ここは怖くない場所」「この人はやさしい」と気づけば、比較的早く慣れてくれる子が多いんです。
もちろん、慎重な子は時間がかかることもありますが、一度人に心を開いたその経験は、「この人を信じてみよう」という勇気に変えてくれるはずです。
理由③好きなこと苦手なことが、うまくいくヒントになる
好きなことや、苦手なことをあらかじめ知っておけるのは、保護犬と仲良くなるうえで、とても心強いポイントです。
たとえば、うちの子は「肉食系女子」と聞いていたので、牛タンのおやつでぐっと距離を縮めることができました。
逆に、「嫌なことをされるとお口が出るかも」という事前情報があったからこそ、最初は距離感を大切に、慎重に接することができたんです。
その保護団体、本当に信頼できますか?
ボランティア譲渡を選ぶ場合、「どの団体から迎えるか」も、とても大切なポイントになります。
というのも、残念ながらごく一部には、動物保護をうたいながら、実際は高額な寄付や費用を請求してくる団体もあるからです。

「一括で払えないなら譲渡不可」と言われたという事例も、実際にありました。
参照:Yahoo!知恵袋
▼Yahoo!知恵袋より

ちなみに、私が譲渡時に支払ったのは50,000円です。
(避妊手術費用+予防接種+お気持ち)
すべての団体がそうではありませんが、だからこそ見極めが大事。
「この人たちからなら、安心して迎えられる」そう思える方から、かわいい家族を迎えてあげてくださいね。
保護犬を迎える前に準備したこと
最後に、筆者が元野犬の保護犬を迎える前に準備したことをご紹介します。
・安心できる場所
・脱走対策
「保護犬を迎える前に何を準備したらいいの?」と悩んだ時の参考にしてくださいね!
安心できる場所をつくる
警戒心の強い保護犬には、安心できる場所が必要です。
これは、「ここは安全だ、怖くない」と知ってもらうためです。

保護犬の安心できる場所って???
具体的には、ホームセンターで手に入るクレート、ペットサークル、ケージなどで十分です。
隠れようとするうちはクレート、次にケージとステップアップしても良いでしょう。

ちなみにわが家は……
初日〜1週間は「階段下のペットスペース」+「クレート」で過ごしました!
ビビリな元野犬の命を守る脱走対策
ビビリな元野犬と暮らすうえで最も重要なのは、脱走させないことです。
なぜなら、人慣れしていない元野犬を脱走させてしまうと、自力で帰ってくる可能性はゼロに等しいからです。

私が実践している「脱走対策」はこちらの4つ!
・室内係留
・ダブル首輪、ダブルリード
・鑑札、注射済票、迷子札の装着
・マイクロチップの登録
室内係留は「脱走させないための工夫」
首輪とリード、鑑札に注射済票、迷子札は、「言葉が通じないペットと飼い主をつなぐ方法」です。
それぞれのやり方は「保護犬を脱走させないために実践している4つの対策を徹底解説」をチェックしてみてくださいね!
まとめ|保護犬はなつくのに時間がかかるけど慣れる
結論として、やはり元野犬の保護犬はなつくまで時間がかかります。
わが家のレインも「慣れた」とは思いますが、いまだに「なついた」とは言えません。
なぜなら……。

なでるのは10回までにして!
嫌なことしたらカプッといくわよ!
散歩は手短にお願いね!
と、こんな感じです。
迎えて約1年半、体を寄せてくっつく、なでて〜と甘える仕草もありません。(2024年9月現在)

塩対応されることが多すぎて、甘えてきた時のよろこびがハンパないです♡
たとえ、なついていなくても「大変だ」と感じることはなく、ちょっとした変化が愛おしく感じられる大切な家族です。
かわいい♡かわいい♡自慢の愛犬!
▼成長した姿もぜひご覧ください▼

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