
「先天性門脈体循環シャント」は治る病気なの?
「先天性門脈体循環シャント」は、手術することで完治が見込める病気です。
とはいえ、ペットが門脈シャントと診断されると「完治する病気なの?」「手術したあとも元気に暮らせるの?」と不安ですよね。
筆者の愛犬は2021年6月に、「先天性門脈体循環シャント」と診断されました。
そして、2023年11月3日に、シャント血管を結紮する2回目の手術を行い、先天性門脈体循環シャント(以下:門脈シャント)の治療は終了、完治となりました。
この記事では、愛犬が門脈シャントと診断されてから、2回目の手術までの様子と今後の治療について紹介します。
門脈シャントと診断され、不安な飼い主さんの希望になれば幸いです。では、早速まいりましょう。
先天性門脈体循環シャントとは?
「先天性門脈体循環シャント」とは、本来ない「シャント血管」があるために、肝臓を通るはずの血液が全身へ流れてしまう病気です。
栄養素・毒素などが肝臓を通らずに全身へ流れてしまうため、肝臓へ栄養分が供給されません。
そのため解毒されなかったアンモニアが、全身に回ってしまいます。
※素人による考え方も含まれているため、正確な情報は引用元をご覧ください。
ALL動物病院行徳
先天性門脈体循環シャントと診断・手術までの流れ
はじめてサイトを訪れた方のために、簡単に自己紹介をさせてください。
わが家の愛犬は、倉敷市保健所出身の元野犬です。
1回目は譲渡前、2回目はわが家に引き取った後に、シャント血管を結紮する手術を受けました。
倉敷市保健所収容・食欲低下・よだれ・脱力
倉敷市保健所収容から、門脈シャントと確定するまでの流れは以下の通りです。

1回目の手術は、譲渡前に行なっています。
手術までの記録は、譲渡時に倉敷市保健所ボランティアteamKARメンバーあさ太ママから譲り受けた「レイン日記」と、検査結果をもとに書かせていただきます。
4月13日|食欲低下
2021年2月26日保健所に収容、4月13日に食欲低下した時の状態は、下記の通りです。
- ごはんやチュールを食べない
- 立ち上がってもフラフラする
- 朦朧として変な寝方をする
翌14日に病院で診察後、そのままボランティアさんのお家に引き取られました。
4月15日急変し夜間診療|瞳孔萎縮・よだれ
病院で診察を受けた翌日に急変し夜間診療。症状、処置は以下の通りです。
【症状】
瞳孔萎縮、よだれ、脱力 → 脳炎を起こしている
【処置】
抗生剤、よだれ止めの注射
ここでは「脳炎を起こしている」と診断されています。
しかし、門脈シャントの症状に「過剰なよだれ」「痙攣・発作」「脱力」なども見られることから、この時は神経症状が出ていたとも考えられます。
診察時は、抗生剤と注射、その後しばらくは点滴で様子をみていたようです。
二次診察病院で門脈シャントと診断
点滴で様子を見ていたものの、症状が悪化し二次診察病院へ。
そこで受けた血液検査で、門脈シャントの疑いありと診断されました。
4月28日|血液検査
二次診察病院での診察、処置は以下の通りです。
【診察】
血液検査、エコー
【処置】
ステロイド注射、肝臓サポートの食事、薬(ラクツロース)、サプリメント(ヴェルキュア)
血液検査のアンモニア数値は689、参考正常値16〜75と比べると異常に高いことが分かります。
さらにエコーでは、膀胱に石と腎臓肥大が見つかりました。
次に、病気を確定するための全身麻酔を使ったCT検査を受けなければなりません。
CT検査をするまでは、肝臓サポートの食事と薬、サプリメントが中心の治療でした。


ラクツロースは、アンモニアを低下させる薬。
ヴェルキュアは、肝臓の健康維持のサプリメントだよ。
6月14日|CT検査
全身麻酔はリスクを伴いますが、病気を確定するためにはCT検査が必要です。
シャント血管を見つけ閉鎖すれば、正常な門脈血流を回復させて完治することが見込めます。
CT検査の結果、門脈奇静脈シャントと確定、さらに血管の奇形が確認されました。
7月12日|結紮手術
見つかったシャント血管を閉鎖するための結紮手術を、7月12日に行なっています。
退院は7月16日です。
アンモニア数値の推移

診断から手術後のアンモニア数値を掲載します。
こちらも参考にしてくださいね。
4月28日 | 689(門脈シャントの疑い) |
5月14日 | 109 |
6月14日 | 143(CT検査) |
7月12日 | 137(手術) |
7月14日 | 96 |
8月9日 | 50(術後1ヶ月) |
6月5日 | 46(術後1年) |
※その他、血中尿素量、アルブミン、血糖値、コレステロールなどの数値も見るそうです。
1回目シャント血管結紮手術から2年後再手術
シャント血管を1度で完全に閉鎖できることもありますが、シャント血管の太さや数によって複数回に分けて閉鎖することもあります。
うちの子の場合、1度で閉鎖できなかったため再度手術が必要でした。
手術から2年、肝臓が約2倍成長
1回目の手術後にアンモニア数値は下がり、安定しています。
そして、術後2年で肝臓が2倍程度成長していることも確認できました。
さらに、前回強めに結紮していたため「手術しても劇的な変化は見込めないかもしれない」とのこと。

数値も安定しているし、変化がないのに手術しないといけないの?
手術する必要がないように思えましたが、ここでほかに気になる箇所があると医師に伝えられ再手術を決めました。

手術を決めた理由は、記事後半をご覧ください。

シャント血管を閉鎖・治療終了・完治
2回目の手術で、シャント血管を閉鎖することができました。
これにより、先天性門脈体循環シャントの治療は終了、完治となります。

後天性多発性シャントに注意が必要
CT検査で、後天性多発性シャントが発生している可能性も見受けられましたが、確定とまではいきませんでした。
今後発生するようであれば、こちらは薬やサプリメントによる内科治療がメインになります。
早期発見・早期治療を行うためにも、半年に1回の血液検査が大切です。
肝不全(肝硬変)の可能性も!?
さらに肝臓への血液の流れが悪いことで、肝硬変になっている可能性もありました。
肝硬変かどうかは、肝臓の一部をとり病理検査で調べます。
こちらの検査結果は、「肝臓の繊維化は起きているものの、肝硬変の状態とは異なる」とのことで、現時点での健康面に影響はないそうです。

検査結果が届くまで気が気でなかったです。
2回目のシャント血管結紮手術を決めた理由
今だから言えることですが、CT検査の結果によっては「手術しない」ことも考えていました。
その理由は以下の通りです。
- 手術費用
- 2回の全身麻酔のリスク
- 手術後の発作
- アンモニア数値、症状は安定している
- 劇的な変化がないかもしれない
手術費用に対する不安はもちろん、CT検査と手術で2回の全身麻酔をするリスク、手術後72時間以内に約10%前後の確率で発作が起きるとも言われています。

食欲があって見た目は健康!
手術が逆に負担になるのでは??
しかし、手術前のCT検査で腸の近くに肉芽腫が見つかったのです。
そして、この肉芽腫が「将来的に腸に影響する可能性がある」と言われたことから、そちらの切除とシャント血管の再結紮を決めました。

肉芽腫がなかったら手術していなかったかもしれません。
術後の経過と手術費用について
肉芽腫の切除もあったため、3時間以上の大手術……。
帰宅して1週間は食欲が低下し、歩くのもやっとのように見えました。

徐々に食欲も回復!
術後1ヶ月でおかわりを催促!
気になる手術費用ですが、手術を受けた病院は大学内に設置された教育施設です。
愛玩動物看護師と実験動物技術者を中心にした人材育成を目的にされているため、相場より良心的な金額だったと思います。
また、初回の手術は譲渡前だったため、みなさまからいただいた寄付金で手術費用を捻出してくださいました。
どちらも同じ病院で手術を受けていますが、こちらは、ホームドクターの紹介をうけて事前予約する二次診療体制のようなので、金額の公開は控えさせていただきます。

金額が知りたい方は、DMよりお問い合わせください。
まとめ|シャント血管を見つけ閉鎖すれば完治する
先天性門脈体循環シャントは、手術することで完治が見込める病気です。
しかし、術後に後天性のシャント血管が発生する可能性もあります。
言葉の話せないペットの不調は、定期的な検査を受けることで早期発見できます。
うちの子は、2回の手術を乗り越え、先天性門脈体循環シャントが完治しました。
これも、倉敷市保健所ボランティアteamKARメンバーのみなさま、手術時に寄付をしてくださった方、そしてInstagramを見て気にかけてくださった方の応援があったからです。
この場をお借りして感謝申し上げます。ありがとうございました!!

保健所にいる時に具合が悪くなったの。
その時は怖かった。
今もご飯が食べられて、ぐっすり眠れるのも保護してもらったからなんだ。
感謝感謝だよ〜。
2月26日 | 雨の日に倉敷市保健所に保護 |
3月29日 | 不妊手術 |
4月13日 | ごはん・チュールを食べない |
4月14日 | 立ち上がるが状態が悪い、変な寝方をするため病院へ |
4月15日 | 急変して夜間診療。脳炎を起こし、瞳孔萎縮・よだれ・脱力 |
4月28日 | 点滴で様子を見ていたが、症状が悪化したため二次診察病院へ |
6月14日 | CT検査 門脈シャント確定 |
7月12日 | 手術 |
7月16日 | 退院 |
【その後…】
2024.12.8「拡張型心筋症」により虹の橋を渡りました。